【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第8章 橙色 - daidaiiro -
〔 亜子様目線 〕
自分の思いを自覚して、
傷だらけの家康様の腕を見て決意を固めた。すがる思いでお世話をさせて下さい、と頼み込むと、
「…好きにすれば、」
と言われて、その素っ気ない言葉も嬉しくて。
「…はい。」
そう返した声には、その嬉しさが隠しきれてなかったと思う。それに、嫌いではない、そう言ってくれたから…。
今まで怖くて避けていたのが嘘のように、
毎日せっせと、できる限りのお世話をさせて頂いている。
食事を運ぶこと、
薬を運ぶこと、
包帯を変えること、
私にはそれくらいしか出来ないけれど。
ふと、
「…元気かな、」
廊下で立ち止まり空を見上げると、両親や親しかった友人の顔が浮かぶ。きっと安土城から消えた私を心配してくれてるだろう佐助くんにも会えないままだ。
でも、この生活に少しずつ慣れて来ている自分がいる。
現代にあれほど帰りたいと思っていたのに、ちゃっかり恋までしてしまって、そんな私が情けなくて、はあと深くため息をついた。
それでも気持ちは消えないんだけれど。
ふるふると頭を横に振って、
センチメンタルな考えを払っていると後ろから、
「おー、亜子。」
「何だかおひさしぶりですね。」
秀吉さんと三成くんがやって来た。
「久し振りだね、三成くん。」
「はい。しばらく纏まった時間がとれず、字のお勉強も出来ずに申し訳ありません。」
「ううん、大丈夫だよ。だいぶん読めるようになって来たから。それより、今日はどうしたの?」
「家康様への伝言と、お見舞いを兼ねて。」
俺はこの前来たばっかりだがな、
家康と三成の二人だと心配だからな、そう言って笑う秀吉さんに、思わず苦笑してしまう。
「前より大分と良くなってますよ。」
「そうか、お前のおかげだな。」
「…私は全然、」
そんなやりとりをしながら、
秀吉さんと三成くんと三人で廊下を歩いていたら、バタバタとこちらにかけてくる足音が聞こえてきて、
向こうの角から橙色の鮮やかな着物が見える。
角を曲がって現れたのは、
綺麗な着物がよく似合う可愛らしい女の子。その子の後を初さんが慌ててついてきているが、その子は止まる気配はなくて。
私たちを見るとハッとしたように近づいてきた。