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【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -

第8章 橙色 - daidaiiro -





「…秀吉!」
「…萩姫、」



彼女は私と三成くんを一瞥すると、秀吉さんの目の前まで来て優雅にお辞儀をした。

どこからどう見ても本当のお姫様。

そんな彼女に気後れする。



「お前、…なんでここに居る。」
「あら、家康が倒れたって聞いて飛んで来たんじゃない。少し遅くなったけどね。」
「家康が倒れた件は、極秘にしてる。またお抱えの忍でも使って調べたの間違いだろう。」
「…ふん、失礼ね。それより、家康の部屋はどこ?この女中頭に聞いても答えないのよ。」



私と三成くんは完全に蚊帳の外で、

二人で目を丸くして見つめ合う。秀吉さんは知り合いのようだけれど、三成くんは彼女を知らないみたいだ。…萩姫、彼女はそう呼ばれていたっけ。

会話の内容から、家康様とも知り合いで間違いないみたいだ。



「秀吉も家康のところに行くんでしょう?なら、案内してよ。」
「断る。」
「なんでよ!」
「はあ…、それよりお前御館様に御挨拶に伺ったか?安土に来たなら、まず御館様に会うのが礼儀だろ。」



秀吉さんにそう言われて黙った彼女は、

今度は私の方に近寄ると



「ねえ、貴女、ここの女中?」
「…へ?」
「家康の部屋に案内してよ。」



そういきなり話しかけられて固まる。

慌てて初さんが止めようとしたけれど、彼女は初さんにぴしゃりと、黙ってて、と言った。その様子に呆れた秀吉さんは、彼女の腕を掴み、私から引き離す。



「この子は安土城預かりの姫だ。」



がむしゃらに秀吉さんの腕を解いていた彼女は、その説明を聞いて、ハッとしたように私を見る。



「…じゃあ、この子が?」



そうポツリと呟くと、



「貴女が何故家康の見舞いに来てるか知らないけど、恋文の返事くらいちゃんと書きなさいよ。姫のくせになってないわ。」



そう言って私を睨んで、

懐から一枚の文を出すと私に投げつけて来た。

慌てる秀吉さんの声、
初さんの困惑する声、
三成くんの心配する声、

いろんな声が届く中、私の耳は、



「…兄上様からの恋文よ。ちゃんと返事くらいしなさい。」



萩姫様のその言葉しか届かなくて、

訳が分からなくて文を見つめたまま動けなかった。



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