【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第8章 橙色 - daidaiiro -
二人が帰った後、
また亜子と二人になった。無言で、ギュッと布団の隅を掴む彼女を眺めていると、何か決意をしたように顔を上げて、
「あの、…もう一度だけ謝らせて下さい。」
そう言って深く頭を下げた。
いくらこの子のせいじゃない、とそう言っても、きっと俺がこんな事になってしまったから気にしているんだろう、と止めずにいる。
すると、
「…嫌われても、恨まれても仕方ないと、」
「…私がいたら余計に気分が悪いと思い、」
なんて訳のわからない事を言い始めるから、はあ、と深くため息をついた。それにビクッと反応しているけど、そんなの知らない。
…何をどう見て、嫌われてるなんて考えに至ったのか知らないけど、
「…嫌いだったら、話してない。」
「え?」
「…安土に来た時は、確かに、冷たくしてたけど、今は別に、嫌い、ではない。」
嫌いだったら部屋にすら入れてない。
すぐに追い返してる。
それに、弓術の稽古もつけてないだろうし、褒美なんて絶対に上げてない。…彼女がつけている黄色の耳飾りをチラリと見ながら、そう思った。
「…あり、がとうございます、」
気恥ずかしくて、そっぽを向いていう俺に、今度は深く御礼をしながら、
「…あの、家康様が嫌ではなければ、
私にお世話をさせて下さいませんか、少しでもお役に立ちたくて、その、嫌でなければ…、」
それでも自信のなさそうにそういうから、
「…好きにすれば。」
とだけ答えて、布団の中に潜り込んだ。