第2章 華守
島に近づいたが、それだけ唄の苦しみは強くなる
サボだけが、何故か何も感じなかった
「俺だけ降りて、この唄の原因を確かめてくる。それから何とかなるならあんたも降りるといい。一旦島から離れているんだ」
サボは、海岸に降り立つと声のする方へ駆けていく
船はスピードを上げて島から離れていった
何故...、俺だけこの唄に苦しみを感じない?
どうして、、懐かしいんだ...
《一人上陸した。効いてないみたい》
「そうなの...でも、船自体が遠ざかったのならその人間を殺すのみ」
《気をつけて、強いよ》
何も無い森を、ただただ声のする方へ進む
近づくだけ、記憶の中の影が震え出す
「...」
「誰だ...?」
「___フォリー・クァルツ______(狂気の水晶)」
目の前の女の手に、突如現れた長い槍
青白く光るそれは、自分へと向けられている
「ここは部外者が立ち入ってはならない禁忌の地。命が欲しいのならば帰りなさい」
「待ってくれ、俺は話がしたいんだ」
「...貴方は...!!?」
《リオノーラ!!!》
ああ、思い出したくもない...
何故ここにいる
何故ここに来た
私はあなたを殺し、あなたを追い払わねばいけない
「...サ.........ボ...」
「...は?」
《リオノーラ!この男の記憶が戻る!これ以上生かしてはダメだ!早く殺すんだ!!》
出来ない
この男は、私の......
「___エクレール・オンブル___(雷の影)」
《どうして!》
「殺せない。彼は、殺せない」
奴隷よ、命に背くというのですか...