第4章 忌まわしき壁と記憶
育ての親である二人が死んでいた。
カーラはどんな気持ちだったんだろう。
その場にいたのかもしれないし、後から知ったのかもしれない。
ただ、いつもは無かった筈の花瓶に花が生けられている。それはぽつんと、寂しげにそこにあってカーラが僅かながらに二人の死を労っている証なのだろうと思った。
二人に感謝していないわけではない。
勿論育ててもらった恩はあると思っていたし特に義母の方はとてもよくしてくれたと思う。今じゃ何故あんなに二人に突っぱねた態度ばかり取っていたのかと問われれば僅かながらの反抗心だったのかもしれない。
自分は、普通なんだと。
そう、認めたかったんだと思う。
手元にある紅茶は仄かに湯気が上がっていてまだほんのりと熱いことを示していた。
「……一人にさせてごめん。
ずっと、一人だったんだよね」
「ううん、平気。
お父さんもお母さんもきちんとお金は貯めてくれてたみたいだったし暮らす分には不自由なんてしてないよ。」
「ねえ、カーラ」
「んー?」
カーラはゆらりと瞬きをして私を見る。
同じ黒髪の筈なのに私とは何だか違って見えて髪から目を逸らし下を見る。
そこには机の木目がよく見えてそれをなぞるように手で触りながらいや、ね、と続ける。
こう言った話はどうも苦手だ。
真面目な話と言うのだろうか。
「訓練兵に志願するって昔言ってたじゃない、あれって今はどうなの」