第2章 複数の選択肢
「既に面談が終わっている者にも何人か素質を見込んでこの話をした。勿論強制ではない。だが、もし残りの一年半で迷いが応じたならその選択肢もあると言うことを頭の片隅に置いておいてほしい。」
「…………」
開いた口が塞がらねえとはこのことだと思う。今、なんて…………?
〝素質を見込んで〟だと?
俺に、素質があるっていうのか?
考えろ。考えるんだ。
なに、簡単だ。俺はずっと憲兵団に入りたくて沢山努力してきた。
親に楽をさせたくて。
周りの奴らを見返したくて。
成績優秀者10位以内を目指して。
頑張ってきたんだ。
こんな、一言で揺らぐな。
こんな、〝素質を見込んで〟なんて言葉に感化されなんかしねえ。
なのに、とてつもなく今どうしようもないくらい嬉しいんだ。
馬鹿みてえだよな。
「………俺、上官には素質がないから今日で訓練兵やめろとか言われるのかと思ってました。すみません、」
「…ははっ、なんだそれ」
「!」
笑った。
あのいつも仏頂面のマリア上官が、だ。
ドクン、
なんだ、これ。
やけに心臓あたりが騒がしい。
どうしちまったんだ、俺…?
心臓を抑えながら首をひねれば、畳み掛けるように上官はこう言った。
「確かにあたりはきつかったかもしれんが見込みのない者に時間を割くほど私も暇じゃない。見込みのある者には個人的に呼び出している指導して課題を与えたり伸びしろがある者には何度も注意もした。もしかしたらお前は俺だけ、と思っているかもしれんがアルレルトや、イェーガー、アッカーマン、それにその他にも個人的に教えている。まぁ、嫌われても仕方ないやり方をしているのは自覚あるがな、私は楽しいんだ。お前達が必死に食いついてきてやってやろうと奮起になって頑張ってる姿がさ。」
「…………」
「だから、泣くな。
よく頑張ってるよ、スプリンガー」
「…っ、………はい………!」
馬鹿みてえだよな。
俺、涙がとまんねえんだ。
女の前で泣くなんてみっともねえって以前なら馬鹿にして笑ってたとおもう。
けど、今はそんな俺も悪くないんじゃねえかって思えんだ。
このたった一瞬でたった一言でこんなにもこの人の見方も考え方もとても好きだ、とそう思えた。