第10章 つまりはそう、キミのせい ~赤司~
仕事ぶりと同様徹底されたそれに、流石の僕も為す術が無かった。
虹村さんやテツヤといった心を許した相手に向ける柔らかい笑顔。幼馴染みだという真太郎に向ける悪戯心溢れた表情。
分厚いメガネが外された時に見えた整った顔立ちに驚いた表情をするヤツら。
それらを見るたびに何故かイライラするものの、精々思ってもいない子供じみた嫌みを言う位が関の山だった。
一言済まなかったと言って非を認めたらよかった。
このイライラが、好きになった相手に向けられた好意に対する嫉妬だともっと早く気が付けば良かった。
ーそれに気が付いたのは、彼女が引退して部活に来なくなってからだった。
元々部活内にしか無かった繋がりが無くなり、あっという間に彼女は卒業し京都の地へ旅立った。
だから彼女は知らない。俺が、僕が、どれだけ彼女に会いたかったかなんて。
あの微笑みを独り占めする夢までみるくらいだなんて、知らないだろう?
洛山のスカウトが来たときの僕の心の内を、キミに今すぐ教えてあげたい位だ。
今度こそ、キミを手にいれて見せる。
不信感を露にする彼女に多少凹んだが、自分の思いを自覚した今、僕がキミを手に入れるのは"絶対"だ。
ー全く靡いてくれない彼女に対してそんな余裕が無くなるのはすぐの事だったのだが、この時の僕には知るよしも無かった。