第10章 つまりはそう、キミのせい ~赤司~
赤司side
「ふぅ~ん?まさかが、キセキの世代の名主将と目されたあの赤司征十郎の想い人だとはねぇ~?」
こちらを一瞥すらせずに立ち去る彼女を未練がましく見ていれば聞こえてきた揶揄するような言葉。
不機嫌な表情を隠すことなくそちらを向けば、両腕を組みニヤニヤしながらこちらを見ている実渕の姿があった。
一見からかうような声色だが隠しようのない怒りがにじみ出ているのを感じ、実渕もまたの事を大切に思っていると知れる。
「…そうだ、と言ったら?」
「あらアッサリ認めちゃうのね、牽制のつもりかしら?」
おー怖い、と肩を竦める実渕。
「ま、アタシの守備範囲は美少年だからアンタの心配するような感情を持ってるワケじゃ無いけど、あの子は大事な友人で仲間だからね」
泣かすようなヤツには渡さねぇよ?
そう締めくくり、何事も無かったかのように注意事項について説明しだした。
その内容を聞きながら、赤司はそっと中学の時の事を思い返していた。
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赤司がを認識したのは自身が主将になってからだった。それまでは殆ど接点も無ければ、意識したことも無かった。
最初の印象は"どんくさそうなヤツ"だった。いくら人手不足とは言え、こんなヤツが1軍のフォローなんて出来るのかと思い気が付けば辛辣な言葉を吐いていた。
言った後泣かせると面倒だと思ったが、彼女は予想に反して嫌悪感を露に"要らない心配ね。ああ、必要以上に関わらないからご心配なく"と吐き捨ててその場を去っていった。
実際にはその仕事ぶりに舌を巻いた。おそらく注意していなければ分からない、所謂縁の下の力持ち的な働きぶりだった。
選手層の厚い帝光、それを支える一翼を彼女は確かに担っていたのだ。
事実、実際にマネジメントを受けていたテツヤや、幼馴染みだという真太郎は彼女が1軍担当と聞き一様に喜んでいた。
人の才能を見出だす事にかけて自負を持っていただけに、彼女の能力を読み違えた事が悔しかった。
気が付けば彼女の姿を目で追いかける自分がいた。
だが言葉の通り自分との関わりを極最小限で済ませる彼女。