第10章 つまりはそう、キミのせい ~赤司~
ギリギリと過去の自分を罵っていたら、痺れを切らしたように赤司が言葉を続けてきた。
「先輩?僕の事無視するなんて、相変わらず良い度胸ですよね。まぁそこが魅力でもありますが」
帝光の時は初っぱなからタメ口による暴言に始まり、常に不機嫌そうに睨んできてはチクチク嫌みを言われていたのが、この丁寧語に口説き文句とも取れる甘い言葉。何をたくらんでるんだ、と思うのが当然である。
コイツを知らない女子なら赤司教に入信せんばかりだろうが私の知ったこっちゃ無いわ。
『…私の事気に食わないのはよく知ってるから、用のあるとき以外話しかけないで』
我ながら冷たい目線を向けそう答える。それがお気に召さなかったのか眉をしかめる赤司。
「っ、」
「あらっ、誰かと思ったらじゃないの!!」
赤司が反論しかけたが、それより早く響いた声。
『レオ姉!!おはよー!!』
途端に顔が綻ぶのを感じた。レオ姉は同じクラスでスタメンの努力家だ。この乙男(オトメン)っぷりにどれだけ癒されている事か…!!
「やっぱりはメガネ無い方が可愛いし、その髪形も似合ってるわ~。どうしたの何の心境の変化?ってあら、そちらはもしかしなくても」
「…新入生の赤司征十郎だ。無冠の五将の実渕玲央だな」
「生意気なガキだなおい」
『レオ姉、言葉遣い戻ってるよ』
「アラやだ。まぁお手並み拝見、てとこよね」
にっと不敵に笑うレオ姉。うーん絵になるなぁ。
『それについては問題無いよ。帝光の主将の名は伊達じゃないからね。っと、そろそろ練習だね、私準備してくるからレオ姉悪いけど赤司に注意事項とかの説明よろしく』
手元のバインダーに目線を落とし、今日のメニューを確認しながら仕事の手順を割り出しつつ、レオ姉に赤司の世話を任せる。
勿論私が説明しても良いのだが、朝からの不運を引き摺っている今の私にとってはイライラさせられるヤツに何か教えてやる心の余裕はない。
レオ姉が了承してくれたので、赤司の方は見ずにその場を後にした。