第8章 バニラシェイクは恋の味~青峰大輝~
何はともあれ口に出しながら書くのは実は割と有効的だ。視覚と聴覚両方使って覚えれば、まぁ一晩位は保つだろう。というか青峰、保たせろよ………?
『あーやっぱりバニラシェイク美味しい……』
大きな図体を若干丸めるようにして素直に書き取りを始めた青峰。その間にうっすら水滴がつき始めたコップを手に取りひと吸いすれば、フワッと広がるバニラの爽やかな甘味。
「ですよね?…ホラね青峰くん、分かる人には分かるんですよ」
「あー?んなもん甘ったるいだけじゃねーか」
黒子は理解者を得た、と嬉しそうだ。周りに花でも飛んでそうな様子に和む。
しかし本当に旨い、これは中毒性あるよね。
黒子がハマるのもよく分かる。
黒子=マジバのバニラシェイクと言っても過言じゃないしな。
顔を綻ばせてシェイクを啜る私と黒子をじーっと見てると思えば、何を思ったのか青峰は私のシェイクをヒョイと取り上げた。
「ちょっと一口寄越せよ」
そうしてそう言うが早いかズゴーッと盛大な音をたてて無遠慮に飲みやがった。そうして"やっぱり甘ぇ"と言いながら大分軽くなったそれを返してきた。
『青峰テメェ、どこが一口だよざっけんな!!殆ど残って無いじゃんかーー!!』
「(間接キス!?ってならない辺りがさんですね…)」
「ウッ、ウルセーな、ホラあれだ、テツはシェイクしか頼んでねぇじゃん。お前はポテトもあるだろ、シェイクも俺が買った奴だし」
『そ・う!!お前が買ったんだろ、勉強見るお礼に!!………もう許さん。明日の再テスト70点以上な。取れなかったら1on1二度としないからな』
「え」
1on1がなくなると困るの私だけど。
食べ物の恨みは怖いんだぞ、という思いを込めて睨み付けてやれば、何故か顔を背ける青峰。
「~~!!分かった、分かったから!!」
顔を更にのぞきこんでやろうとするが、手で顔を覆って叫ぶように宣言し、凄い勢いで書き取りを再開したのだった。