第8章 バニラシェイクは恋の味~青峰大輝~
『まぁ冗談はとにかく、青峰のクラスの国語担当の教師、再テストでは問題代えて来るらしいからなー』
マンモス校帝光。同一教科の教師も学年毎で数人居る。私のクラスの国語担当の教師は授業中に色んな本のはなしを織り混ぜてくれる初老の優しい先生なのだが。
同じ先生だったという虹村主将に聞いた所、青峰のクラスの国語担当の教師は再テストだからと言って温情をもって合格を前提に、といった問題は出して来ない厳しいタイプの教師らしい。
ちらりと青峰のテスト用紙を見ると、まるで"忌々しい"とでも言いたげな乱暴なバツ印が並んでいる。それはもう、採点しながら舌打ちでもしてたんだろうな、という位荒々しいものだった。
性格も真面目だという年若いその教師からすれば、普段の青峰の授業態度も業腹ものだろう。
……無理も無いけどな。
ふぅと一息つき、教科書の範囲を開く。問題を代えると言っても主要なものは出すだろうから、ヤマを張るしかない。教科書と本テスト用紙を見比べながら出そうなものをピックアップする。
『よし、こんなもんかな。青峰、全部20回ずつ書け』
「げ、20回もかよ!?」
「……さん、随分迷いなく選びますね」
『こんな事もあろうかと虹村主将にあの先生の過去問貰ってたの』
私だって1年にして女バスのエースと目されており、その言葉に恥じぬように練習に励んでいる。
それでも彼は、いや彼らは更にオンリーワンの才能を秘めていると思う。
特に青峰がボールを追いかける様子は、私の向上心を存分に刺激してくれるのだ。ちょくちょく1on1しようと誘ってくれるのでそれも良い練習になる。
つまり部活停止は困るのである。本人には絶対に言わないけど。
そんな訳で虹村主将に頼み込んで過去問を貰ったのだ。しかも、青峰が再テスト合格できたら奢ってやるよと言ってくれたのだからこれはもう絶対に合格させないとね。