第7章 たとえばこんな幽霊奇譚~火神大我~
そもそも最も縁遠いハズの火神が図書室に居たのは偶然だった。
部活が休みで、図書当番へ向かう黒子を見送った。
さてストバスにでも寄るかと昇降口へ向かったところ、担任から黒子への用事を伝えるよう頼まれた。
渋ったものの、担任の担当教科である英語の小テストについての小言が始まりそうな気配だったため慌てて二つ返事で了承したのだ。
いざ図書室に来たものの人の気配はなく(後で聞いたところ黒子は用事で丁度職員室へ行っていたらしい。担任とは行き違ったようで、火神が無駄足を踏む事は無かったが)、普段の自分が居る騒がしい空間との余りの違いに居心地の悪い思いを抱いていた。
メモでも置いて帰るか、と思い何気なく目線を巡らせるとそこにいたのが彼女だった。
「なぁアンタ、図書当番か……ですか?黒子ってヤツに……」
伝言頼んで良いか、と続けようとしたところで漸く、彼女の後ろの景色が透けて見える事に気が付いたのだ。
そのあとの展開については先ほど述べた通りである。
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「図書室の幽霊の情報?ん~、実は姿をみた人は居ないんだって。声を聞いたとか位なんだよね。七不思議でも調べてるのか?」
「…………」
「水戸部が、七不思議なら保健室のお化けの方が有名かも、って」
尚も七不思議の詳細を教えようとしてくれる小金井にやんわりとお断りを入れる。
他の先輩に聞いても、目撃情報自体が皆無であり声もおーい、とかそう言う短いものだという。
幽霊というには余りにも控え目な登場に、情報収集は困難を極めた。