第7章 たとえばこんな幽霊奇譚~火神大我~
ー何故見下ろされているのか?
腰が抜けたからに決まっている。
ー何故腰が抜けたのか?
目の前の女子生徒に驚いたからに決まっている。
ー何に驚いたのか?
女子生徒の後ろの景色が透けて見えた、いや現在進行形で見えているからに決まっている。
「オマッ、」
お前何者だよ、と言いたいのに声が上手いこと出てこない。
しかし相手はこちらの言いたいことがわかったのか、あっさりとこう返してきた。
『はぁ、多分私、幽霊ってヤツみたいです』
その言葉を聞いて、今度こそ俺は意識を手放した。
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「…………くん、………みくん。……バ火神、くん」
誰か呼んでいる。しかも腹立たしい呼び方。それが俺の意識を一気に引き上げた。
「ッオイ誰がバ火神だゴルァッ!!………って、くろ、こ……?」
「はぁ、黒子ですけど。火神くんどうしたんですか?」
黒子の言葉を無視してばっと辺りを見回す。
「おい黒子、ここに女子いなかったか!?」
「ボクが来たときは火神くんだけでしたけど。噂の幽霊でも出たんですか?」
「ゆゆゆ、幽、霊だとっ、んなわけあるかぁっ!!」
火神の剣幕に若干眉を潜めつつ適当に言葉を返したのだが予想以上の反応が返ってきて逆に面喰らう。
「え、本当なんですかそれってどういう、」
『スミマセン、本当に驚かせるつもりは無かったんですけどつい……』
黒子が詳しく聞こうとした瞬間、第3者の声が空間を揺らした。
「ギャーーーー!!出たぁっ!!!」
「幽霊は初めて見ましたね……」
「おまっ、何でそんな落ち着いてやがんだよっ」
「結構驚いてますけど」
「どこがだよ!!」
尻餅をついたまま物凄い勢いで後ずさる火神と、至って冷静な黒子。
『……ふふっ、……あ、ごめんなさい、つい。何だかふたりの掛け合い、初めて見た気がしなくって』
対称的な2人の様子に口に手をあて彼女が微笑む。その笑顔には、害意は全く感じられない。
だが面識はない、はず。
まぁお互い生徒であるため何処かですれ違ったとしてもおかしくはない。