第7章 たとえばこんな幽霊奇譚~火神大我~
その言葉に、皆一斉にある人物を探す。
「……言っておきますけどボクじゃありませんよ」
「うわぁっ、いつの間に!?」
「休憩時間の最初から横に居ました」
探して居た相手がすぐ真横に居たら誰だって驚く。だがちょっとムスッとしている(ように見える)黒子は、最初から小金井の横に居たらしい。入学して間もないのにそんな不名誉な噂されたくありません、と若干拗ねているようだ。
この春出来たばかりの後輩の中でも群を抜いて存在感の薄い黒子。彼は図書委員になったと聞いていたので、てっきり彼を幽霊と間違えた誰かが流したのかと思ったのだが。
皆同じように考えていたようで、誰とも無しに目を会わせ苦笑し合う。
「悪ぃ悪ぃ、黒子。てかその噂の幽霊って確か女の子って話じゃなかったか?…you、霊かい?…キタコレ!!」
「ダァホ!!サムいギャグ飛ばしてる暇があったら練習しやがれ!!」
そんな風に日向からの檄が飛び、休憩時間が終わってしまう事もありその話題はそれ以上発展する事は無かった、のだが。
もう少し詳しく聞いておけば良かった。
後から悔いると書いて後悔。分かってはいるが現在の状況に、どうしてもそう思わずにいられない。
『あのぅ、何か驚かせたみたいですね、スミマセン』
若干困惑ぎみの、小柄な女子生徒の声が降ってくる。
こちらは標準身長よりかなり上の男子高校生なのに、見下ろされているのだ。