第7章 たとえばこんな幽霊奇譚~火神大我~
学校と言えばつきものなのが七不思議。
新設校に何故と思わないでも無いが、ここ誠凛高校でも創設2年目にして既に10個くらいの不思議がまことしやかに囁かれている。
3階校舎北側の女子トイレでは、花子さんと赤いマントが縄張り争いをしているらしい。
保健室のベッドの奥から2番目にいつのまにかナニかが寝ているらしい。
音楽室のベートーベンが血の涙を流しているのを見ると呪われるらしい。
理科実験室の模型は満月の晩限定でコサックダンスを躍るらしい。
プールには人魚のように美しい少女がいて、魅入られると水底に連れていかれるらしい。
どう考えても胡散臭い不思議の数々で、果たして本気にしている者がいるのかも怪しい。
だが、一つだけ。
偽物の中にそっと本物が紛れ込んでいるなんて、一体誰が想像しただろう。
少なくとも俺にとっては全く予想外だった。
「図書室に幽霊が出るらしいぜ!!」
監督のキッツい練習メニューをこなし、束の間の休憩時間にこんな事を言い出したのは我が誠凛バスケ部のマスコットキャラクター的存在の小金井だった。