第6章 赤の王様 ~赤司征十郎~
取り敢えず引っ付いてくる赤色をそのままに荷物を受け取り、タクシーに乗り込む。どうせ家も隣同士だからと自分の家の住所を運ちゃんに告げようとしたのだが。
「○○ホテルまで頼む」
勝手に行き先を告げる征十郎。文句を言おうとするが、繋がれた彼の手が微かに震えているのを見て、止めた。
『で?誰に負けたの?』
ホテルについて爽やかな笑顔でチェックインする征十郎だったが、部屋に入った途端背中に無言で抱き着いて来た。WCは昨日終わった。黒子くんのメールには結果は書かれて居なかったけど恐らく。一応確認でそう声を掛けた。
「テツ、ヤに」
黒子くんぐっじょぶ。今度会ったらマジバのバニラシェイク奢ってあげるからね。
『そっか、一杯頑張ったね。お疲れさま、征十郎』
そう言って身を反転させ、自分よりも大きな子供をぎゅうぎゅうと抱き締めた。身長差のせいで殆ど私が抱き付いている形だけど。
征十郎の呪縛を解き放ったのが、黒子くんでよかった。これで征十郎はやっと前に進めるね。
「……」
『ん』
「、」
『うん』
今日ばっかりは、目から汗が出てますぜ、とか言わないからさ。
「シていいか?勿論良いよね?……痛いじゃないか」
前言撤回。コイツアカン(3回目)
鳩尾に思い切り拳をめり込ませて距離を取ろうとしたが、がっちりホールドされて叶わない。
『なに言ってんのかな征十郎さんや。ここは初めて負けて茫然自失、でも落ち着いたらリベンジに向けて頑張るぜな所じゃないの!?』
「そこはもう通り過ぎたよ。そうしたら、が"負けたら胸を貸してやるからさ"って言ってたの思い出してね」