第5章 覇王樹に寄せる想い ~笠松幸男~
「っち!!?会いたかったッスよ~!何でオレからのメール無視するんスか!?っぐっ・・・!」
『カントク、遅くなりました』
私を見るなり駆け寄ってきた黄瀬の鳩尾に、黒子直伝のイグナイトをかましながらカントクへ声を掛ける。
黄色いのが何か言ってるけど無視だ、無視。
「さん、もう少し遅く来たら良かったですね」
『うん、それな黒子。まぁいいや、飼い主に連絡するから』
そう言って携帯を操作してアドレスから目的の人物の物を引っ張り出す。
『あぁゆきくん?今大丈夫?何かウチに犬が迷い混んでるんだけど。ーへぇ、じゃあバスケに支障がでない程度にシバいていい?ーふふ、こっちだって負けないよ。うん、じゃあまたね』
おい黄瀬。お前モデル(笑)の仕事があるからって練習抜けて来たらしいね?
ゆきくんこと海常の笠松幸男主将への通話を終え、既に震えている犬に絶対零度の微笑みと恐れられる表情を張り付けて向き合う。
「あの、っち・・・?モ、モデルの仕事は本当ッスよ?」
『問答無用』
そこらの女子が見たら母性本能刺激されまくりであろう潤んだ瞳でこちらを見てくるが、私には効かないって何時になったら理解するのかこの鳥頭は。
もう1回イグナイトをかまして制裁完了。
流石に他校のエースにそこまで危害を加える訳にはいかないからね。後はゆきくんがシバくでしょ。
ちなみに黄瀬が黒子に告白紛いのセリフを吐いた後すぐに体育館のドアを締めたので、ギャラリーの女の子達があらぬ勘違いをしている可能性もあるが、黒子に害が及ばない限り訂正するつもりはない。
「なんでっちは笠松先輩相手だとそんな可愛い表情するんッスか!?オレの時と扱いが違うッス!!笠松先輩ずるい!!」
『!?』
黄瀬がそう叫んだ瞬間、私の手から携帯が滑り落ちた。