第20章 既に貴方に夢中です ~高尾和成~
ヒュッ、パシィン
ヒュッ、パシィン
黒子くんに相談してから吹っ切れた私は、とにかく次に和くんに会えたらもっと色々聞いてみようと決めていた。
夢に見るくらい気になっていると認めてしまえば楽になれた。
そう決意し、夢の中で無心に弓を引く。
部活には響かないようにしていたつもりだったけど、それでもうじうじしている間は何時もよりミスが多くて、左腕には弦で払ってしまって出来た内出血が広がっていた。
治りかけのそれらは色も濃くて、我ながらグロいなぁと苦笑が漏れる。
ちょっと心が乱れて集中出来なかったりするとこうしてしっぺ返しが降ってくる弓道だけど、やっぱりこうして夢に見るくらい好きだ。
バシンッ
「大丈夫っすか!?」
『あいたったた…って和くん!?』
うっかり力が入りすぎて払ってしまい顔を顰めるが、和くんの声が聞こえた事に驚く。
内出血を心配してくれる彼は、泣きそうな表情で何でそんなに、と呟く。
『和くんのそれと一緒、かな?』
だって好きだもの、和くんだってバスケ好きでしょう?そう言う思いを込めて足元を指差す。そこにはやっぱり沢山のバスケットボール。
彼の手を取れば、マメが一杯で節くれだっている。
ああ、彼が好きだ、なぁ。
彼を、現実でも探したい。
そう思って口を開こうとしたらぎゅっと手を握られそのまま抱き寄せられた。
『かっ、和くんっ!?』
「サンが、好きだ」
『和く、んぅっ!?』
驚いて名前を呼べば、近づいてくる彼の顔。
あ、と思う間もなく離れた柔らかい感触に、キスされたと気が付き顔に熱が集まり言葉が出てこない。
「コレ、持っといて?…高校受かったらもいっぺんサンのこと探すから!!覚悟しといてくれよ?」
『和くん、私っ、私もーーっ』
手にバスケットボールの付いたストラップを渡された所で我に返るが、同時に目が覚める感覚がして、結局言いたいことも言えないまま目が覚めた。
それでも手の中にはちゃんとストラップが存在していて、胸のが温かい何かで満たされるのを感じずにはいられなかった。