第20章 既に貴方に夢中です ~高尾和成~
和くんを夢の住人だとはっきり認識して以降は、より"年上のお姉さん"の顔を全面に押し出して和くんの話を聞くようにしていた。
それでもふとした拍子に和くんの長所を見付けてしまっては胸がツキリと傷んだ。
好きだなぁ、と淡い気持ちが芽生えた途端に振られたようなものだから上手く気持ちの整理が出来ない。
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「…最近何かあったんですか?」
高校生活初めての4月も後半に差し掛かったある日、黒子くんにそう言われた。
『…そんなヘンな顔してた?』
「ええ、笑顔が取り柄なさんなのに、ここ最近辛気くさいです」
そう言ってムニーっと人の頬をつまみ上げてくる黒子くん。
『いひゃいでふ』
「何言ってるか分からないです。…だから何言っても大丈夫ですよ」
全く失礼なヤツめと思っていたが、僅かにその綺麗な瞳に心配そうな色を滲ませてそっと手を離してくれた。
『…夢に知らない男の子が出てくるって言ったよ、ね』
「…はい」
『どんどん成長してるの』
「…はい」
『私、どうしてか彼が現実にもいる気がしてたの。でも、居ないんだって分かって、』
何だかんだ言って相槌を打ってくれる黒子くんに、彼に惹かれ始めていた事、友人を通じて現実には存在しないと知ったこと、諦めないといけないのに上手くいかない事を、たどたどしく説明する。
「…キミは馬鹿ですか」
『…ぶっ!?そこでその返し!?黒子くんって結構Sっ気あるよね!?』
「そもそも本当に居ないか、1回しか確認してないんでしょう?日々成長してるなら本当は年下じゃなくてもっと年上なのかも知れませんよ。本人からもっと色々聞いて調べてからでも遅くないでしょう?それでさっさと告白するも良し、諦めるも良し。思う存分行動したらどうですか」
黒子くんには珍しいノンブレスの長文に目を白黒させていると、それに気がついた黒子くんがふっと笑った。
「振られても、今ならこの広い背中でも貸してあげますけど?」
『…黒子くん華奢じゃん』
「失礼な、見てくださいこのちからこぶ」
『見えないし!…て言うか振られる前提なの酷くない!?』
ムッとした表情で袖を捲って見せる黒子くんについ笑いが込み上げる。
「ほら、やっぱりさんは笑ってる方が良いですよ」
『…うん、ありがとう』