第20章 既に貴方に夢中です ~高尾和成~
『すみません無理を言って。お陰で見つかりました!ありがとうございます』
「ああ、いや、うん」
『いえ本当に!大事なんです、コレ…ってあれ、緑間くんじゃん久しぶり…でもないか卒業式ぶり?試合見に来てたの?』
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和くんが最後に夢に出てから1週間。部活が休みだった私は黒子くんと火神くんに誘われて、海常まで練習試合を見に来ていた。
凄く見応えがあって、試合後は感動のあまりちょっと泣いてしまった位だった。
黒子くん達にお祝いの言葉を伝えて、皆で一緒に帰ろうと言う言葉に甘えようと、何気なくポケットに手を入れた所で和くんに貰ったストラップが無いことに気が付いた。
試合前はあったから、泣いた時ハンカチと一緒にポケットから出てしまったのだろうと踏んで、彼らに別れを告げ体育館に引き返す。
丁度体育館に居た海常の主将さんに頼んで2階の観客席に上がらせて貰うと、無事に座っていた椅子のそばに探し物を見つける事が出来た。
どうやら主将さんは体育館の施錠をしていたみたいで、申し訳なくて小走りで彼のもとへ向かい、無事に見つけた事を報告した。
そこで冒頭に戻り、緑間くんと黄瀬くんが居るのに気が付いたと言う訳だ。
黄瀬くんを見るなりシバクぞ!と飛び蹴りを披露してくれた主将さんに驚きつつ、首根っこ掴まれて連れていかれる、ちょっとスッキリした様子の黄瀬くんを緑間くんと見送っていたのだが、ふと緑間くんが目線を動かした。
何となく釣られてそちらを見た所で、緑間くんが発した言葉とその光景に、一瞬寝てるのかな私、とか思ってしまった。
「おい高尾、何をしているのだよ」
『…え…?…かずく、ん…?』
混乱したままそれでも彼の名前を呟いた瞬間、弾かれるようにこちらに駆け出して来た和くん。
「サン、みーつけた」
さぁ、何から話そうか?
泣き笑いの表情のまま抱き締めて来た和くんは、少し震える声でそう囁いた。
続けて"もう逃がさねぇーよ?"と呟いた彼に、キャパシティーオーバーになっていた私が辛うじて出来たのは、首を縦に振る位なのだった。
fin
→あとがき