第20章 既に貴方に夢中です ~高尾和成~
「サン!オレ、アイツとまた話して見る!!それと2年前も!助けてくれて本当にありがとうございまっす!!」
ハッとして和くんを見れば、ちょっと畏まった様子でそう言ってくれた。
その真摯な表情に思わず思考が固まるが何とか建て直す。そして"年上のお姉さん"っぽく笑って親指をぐっと立てた所で、夢から覚めた。
次に瞬きして見えたのは自分の布団のシーツ。ベッドサイドのスタンドミラーを見れば僅かに赤くなっている自分の顔が映っている。
…これ、和くんにバレてないよね…?
確かめる術は無いのだけど、何となくペチペチ頬を叩いてしまう。
時計を見れば朝練に間に合うギリギリの時間。慌てて支度し、文字通り家から飛び出すように学校に向かったのだった。
-------------------------
「知らない異性が夢に、ですか…」
「はぁ?どっかで見たとかじゃねぇーの?」
『私も思ったんだけどさ。…成長してたんだよね』
「知らない人が夢に出るのは不安があったり、人生の変化を予兆している、と本で見た事がありますよ。でも成長している、というのは不思議ですね…」
何とか朝練にも遅刻せずに参加でき部長に轢かれずにすんだ(ちなみに部長の従兄弟にもこの轢く、というのが口癖の人がいるらしい。なにそれ怖い)のだが、身の安全が確保されるとやはり気になるのは夢の事で。
朝のHR前にクラスメメイトの黒子くんと火神くんに話して見れば、黒子くんは持ってる知識を惜しげもなく披露してくれた。うーん流石だなぁ。
火神くんも口調は雑だけどバカにするような空気はない。
不安…、高校入ったばっかりだからとか…?等と考えていたら本鈴がなり担任が教室に入ってきた。
取り敢えず2人に礼を言い姿勢を正そうとしたところで、横の席である黒子くんがとんでもない爆弾を落としてきた。
「ああでも、理想の恋人像だったり近々恋人が出来るっていう暗示もあるそうですよ、知らない人の夢って」
それを聞いて咄嗟に浮かぶ和くんの姿に、一気に顔に熱が集まるのを感じる。
イヤイヤ、彼は小学生だから!ショタコン趣味無いから私!そもそもまた彼に会うとは限らないし!!
そんな私の動揺を他所に黒子くんは、ふっと微かに笑ってさっさと黒板の方を向いてしまった。
黒子くん絶対楽しんでるなコレ…。