第19章 空飛ぶ鷹は夢を見る ~高尾和成~
このままUターンしたいのを抑え、サンが実在するかもと言う希望に胸を熱くしながらペダルを漕ぐ。
やっとのことで海常にたどり着いて見れば、ゾロゾロ出てくる海常生らしき制服姿の生徒達。
「黄瀬君泣いてたねー」
「練習試合でも負けて悔しかったのかな」
「「でも泣き顔も格好良かった!!」」
すれ違う女子がそんな会話をしてるのを聞いて驚く。男子にはザマァだとか大したことねぇなとか言われていて、自分の事でもないのに思わず眉根を寄せた。
黄瀬と言えば言わずもがなキセキの世代の1人だ。それが去年出来たばかりの新設校に負けた…?
オイオイ、ヤバいんじゃないの誠凛。流石サンの居る(かも知れない)高校だ、…じゃなくて、ちっと警戒しとかないとな。
何せあの真ちゃんも危険視してるみたいだし?
そう思いながら体育館に到着すると、少し離れた水道の側に特徴的な緑の髪が揺れるのを見つけた。
海常のユニフォームを着た金髪の男と話をしているようだ。全中で見た覚えもあるしあれが黄瀬だろう。
「おいテメー信号捕まったからって先いきやがって!恥ずかしかったじゃねぇーか!!」
黄瀬らしき人物が此方に視線を寄越したのを見て、大声を出して真ちゃんのツレだと分かるようにした。
負けて泣き顔を拝みに来た無粋な輩と思われたら堪らない。試合に出てもないヤツにとやかく言われる筋合い無いもんな。
ホッとしたらしい黄瀬に軽く手を上げて2人の方へ行こうと足を向けた所で、オレの耳は信じられない音を拾った。
『すみません無理を言って。お陰で見つかりました!ありがとうございます』
「ああ、いや、うん」
『いえ本当に!大事なんです、コレ…ってあれ、緑間君じゃん久しぶり…でもないか卒業式ぶり?試合見に来てたの?』
「か、お前こそ何故ここに居るのだよ」
『私は黒子君たちに誘われて応援に来たの。黄瀬君はあんま喋った事無かったよね。って言います、帝光出身だよ。…私が言うのも何だけど、黄瀬君何かスッキリしたみたいだね』
「さん…うん、ありがとうッス」