第19章 空飛ぶ鷹は夢を見る ~高尾和成~
「高尾、早くしないと試合が終わってしまうのだよ」
「真ちゃんがおは朝見てっからだろ!?」
あれからサンが夢に出る事はなくなり、オレは受験に向けて猛勉強をして見事秀徳へ進学する事が出来た。
打倒緑頭、と思っていた本人が同じ高校でしかもオレの事なんて覚えて無いという悔しさに加えてサンが励ましてくれた時の場面を彷彿とさせる語尾(コイツのは可愛くない)に、入学当初は本当に驚いたものだ。
それでもコイツー緑間はキセキの世代と呼ばれる人物であるし、オレだってバスケの強豪校と言う理由で選んだのだから、居てもおかしくはない。
取っ付きにくい人物ではあるが、バスケへの姿勢は真摯の一言に尽きる。間違いなくウチのエースだ。
気に食わない気持ちだってあるが、その人事の尽くしっぷりは認めざるを得ないし、余計に越えてやりたいと言う気持ちが大きくなった。
クラスも一緒だし、そんな訳で何かとつるんで居る。
今日はエース様の我が儘で他校の練習試合を見に来ているのだが、海常に行くぞとしか聞いて無かった。
「そーいや真ちゃん、海常の相手…カゲ薄い子だっけか、ソイツの居るガッコって何処なんだよ?」
ワザワザ見に行くとなれば、両方の学校を注目しているって事だ。
「誠凛だ。む、渋滞だな。高尾、オレは先に行く。お前は後から来るのだよ」
「へぇ誠凛…って誠凛!?え、ちょ、ま、…って真ちゃん速えぇぇ!!」
正邦とか泉真館辺りかな、と思いながら聞いて見れば、返ってきたのは予想外の名前だった。
慌てて聞き返そうとするが、奴はその長身に見合う長い足で瞬く間に遠ざかってしまった。
お前どんだけ試合見たいんだよとかチャリアカーに1人ってめっちゃ恥ずかしいんだけどとか物申したい事は多々あるが、それより重要な事が1つ。
「…あった…。新設2年目、誠凛高校…」
携帯で検索すればあっさり表示される校名。
秀徳に入学を果たしてさぁサンを探すぞと意気込んだものの、主にエース様のせいでバタバタして機会を逃していた。