第19章 空飛ぶ鷹は夢を見る ~高尾和成~
その内出血に重なるようにして、今しがた出来たと思われる赤みが存在を主張していた。
つまり内出血のある場所を再び打ち付けたと言う事だ。想像するだけで痛い。
「何でそんなに…」
『和くんのそれと一緒、かな?』
痛い思いをしてまで、と続けようとした言葉は彼女に遮られる。そのまま彼女が指差すままに足元を見遣れば、いつの間にかボロボロになったバスケットボールが散乱していた。
何故か自主練で消耗したボール達だと分かった。
『ホラ、手だって一杯練習した人の手、してる』
そう言ってすっと手を取られる。見慣れた自分の手なのに彼女に握られただけで特別な部位のような気持ちになるから不思議だ。
「…そっか、そうっすよね」
彼女もオレも、夢に見る位部活が好きなんだ。
そして、夢に見る位彼女が好きだ。
そう思うと我慢できず彼女の手をぎゅうっと握り返す。左親指に巻かれたテーピングにうっすら滲む血が、彼女の努力を物語っている。
そうだ、オレもあの緑頭に負けないくらい練習して強くなろう。高校でまた戦う事があったら今度こそ勝ってやる。
自然にそう思えて、テンション上がってしまったオレはそのままサンを抱き締めていた。
『かっ、和くんっ!?』
「サンが、好きだ」
『和く、んぅっ!?』
今は見下ろす位置にある彼女の顔に近づきそのまま唇を奪う。
直ぐに離れれば見えるのは、真っ赤で驚いた表情のまますうっと薄れ始める彼女の姿。
「コレ、持っといて?…高校受かったらもいっぺんサンのこと探すから!!覚悟しといてくれよ?」
咄嗟に、ポケットに入っていたバスケットボールのストラップを押し付ける。
『和くん、私っ、私もーーっ』
慌てて声をあげるサンだけど、全部言う前に消えていった。ちょ、期待しちゃうんですケドその言い方!!