第19章 空飛ぶ鷹は夢を見る ~高尾和成~
中3の春、俺の居た中学は強豪校の帝光相手に練習試合でボロ負けした。
PGとして、主将として出ていた試合で、相手が二軍だったこともあり最初のうちはいいペースで展開していた。
けれど緑髪の眼鏡野郎が交代でコートに入った途端こちらのものと思われたペースは霧散した。
次々と諦めるチームメイトの姿を、緑髪の男は一瞥だにしなかった。
最後まで諦め無かったのはオレともう1人、例のダチだけ。それでも試合後には大きな虚無感に襲われたものだ。我ながら多少荒れもしたし。
さすがに人前で見せる事はしなかったが、携帯に付けていたバスケットボールのストラップを引きちぎってしまった位には苛ついていた。
その状態から脱して前向きになれたきっかけは、やっぱりサンの出てくる夢だった。
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ヒュッ パシィン
いつもの夢の中、オレはいつもの道場にいた。
目線の先にはやはりサンが居たが、いつもとは違いこちらに気が付いて居ないようで、繰り返し繰り返し、ただ一心に的を見据えて弓を引いていた。
バシンッ
「大丈夫っすか!?」
『あいたったた…って和くん!?』
その凛とした様子に見惚れていると、急に弓の弦が彼女の腕に襲いかかった。
慌てて声を掛けるが彼女は少し顔を顰めたものの、むしろこちらの存在の方に驚いたようだった。
「って腕!!めっちゃ内出血酷いじゃないっすか!!」
いたがる様子のない彼女に、音は痛そうだったけど実際はそうでも無いのかと思いきや、視界に入った彼女の腕の色に仰天してしまった。
『?ああこれ?今のじゃ無くて前のだよ。治りかけな分、色が濃くなってるからちょっとグロいよね、ゴメンね』
左腕に広がる痛々しい内出血に言及するが何でもないようにそんな言葉が返ってくる。