第19章 空飛ぶ鷹は夢を見る ~高尾和成~
ちなみに件の友人はサンの予想通りだった。
自分の好きな女子がカズの事を好きって聞いてモヤモヤした、カズが努力していたのを知ってたのに変な事言って済まなかった、と向こうから謝って来てくれた。
サンの予想通りだった事に驚きつつも、お陰で変に意固地にならず素直に謝罪を受け入れる事が出来た。
ソイツとは高校が離れた今でも良い友人だ。
そして、今度こそ彼女が夢に出ることは無くなるだろうという予想に反して彼女はオレの夢に数ヶ月に一度くらいの頻度で現れるようになった。
弓道をしていると聞いたからか、2度目以降はずっと袴姿で現れる彼女。
オレはいつしかサンに会えるのを心待ちにしていた。
年の差なんてどうってことない、まずは現実でも会いに行こう、そう思うのにも時間はかからなかった。
しかし彼女が通っているという高校を調べても、そんな高校は存在しなかった。小学6年生の事だった。
それを知った時はこの上なくショックを受けて、調べるんじゃ無かったと後悔した位だった。
ならば彼女は一体何だろうと考えると、自分の潜在意識が生み出した自浄作用的な何かというのがいちばんしっくり来る。
それでも、実在はしないとし知ってもなお、自らが生み出した架空の存在に惹かれてるなんて死んでも認めたく無かった。
サンはずっと最初に会ったときのまま変わらない。
そして俺と違って長くても数日という短い間隔で俺の夢を見ているのだという。
『だから和くんに会うたび大きくなってるのにはもうビックリだよ。親戚のおばちゃんになった気分だわ』
そう言ってニヒヒと呑気に笑うサン。
オレは最初にサンに出会った頃から比べても、ぐっと大きくなっていた。
見上げる存在から目線が合う存在、そして遂には見上げられる存在に。
良く見える眼を使い周囲を注意深く観察する事を覚えたオレは、割と上手く立ち回れていると思う。
しかしそれは時に"見えすぎる"事も在るという事で。
周りのドロドロしたイザコザを垣間見てしまっては、ウンザリして心が少しずつ磨り減ってしまう。
サンの夢をみるのはそんな時だ。話を聞いてもらって、起きたらスッキリしている。