第19章 空飛ぶ鷹は夢を見る ~高尾和成~
「、サン…?」
『えっ、えーっと、もしかしなくても和くん、だったりする…?て言うかどうしたのその顔!!…泣いてたの?』
帰宅後すぐベッドに潜ったのは覚えているが、どうやらいつの間にか寝てしまったらしい。
正直この頃はサンとの思い出は薄れはじめていた。二度と会えないのならと、熱に浮かされて見た不思議な夢として処理しようとしていたんだろう。
だから何処かの道場のような所に居ると認識して、その視線の先に居た存在に驚愕を隠せなかった。
ほぼ2年前に夢で会ったっきりの彼女がそこにいた。
黒髪をアップにして袴を身に纏う彼女は、とても綺麗だった。
オレへの態度に若干の引っ掛かりを覚えるが、ぐしゃぐしゃの顔を見られた事への羞恥心が先に立ち一旦は追及を棚上げした。
「っ、イヤ、これはそのっ」
『ー何が、あったの?』
眉根を寄せて、真剣な表情で告げられた有無を言わせない言葉。これは誤魔化せそうにない。
それに誰かに聞いてもらいたい、という気持ちがあったのも事実で、ポツポツとこれまでの事を話したのだった。
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『うーん成る程、ね。ーもしかしたらだけどさ、その友達はちょっと焦っちゃったんじゃない?』
オレ何かしちゃったんだと思う?そう最後に問い掛けて説明を終えると、ふむ、と軽く握った拳を口に当てながらサンはそう言った。
「焦った…?」
『言い方は悪いけど自分と同じ様な立ち位置か、もしかしたら自分より冴えないヤツのハズだったのにいつの間にか格好良くなりやがって、と思ったとか。
それか、好きな子に"和くんが好きなの"って言われてフラレちゃったとかね。
女の子の方がそう言う変化には敏感だし。特に格好良くなった男子だと人気急上昇だよ?』
クエスチョンマークを浮かべるオレには推論だけど、と前置きしてから噛み砕いて説明してくれた。
小学生相手に結構率直な物言いだなとは思ったけど、その分物凄く納得出来るし思い当たる節ありまくりの内容だった。