第19章 空飛ぶ鷹は夢を見る ~高尾和成~
死の淵から生還したオレは、バスケを始める事にした。
彼女にはもう会うことは無いだろう、という予想は割と自分の中でもモヤモヤする事柄だったようだ。
今になって思えば、その落胆を振り払うかのように彼女の提案したバスケに飛び付いたのだと分かる。
きっと最初から彼女に惹かれてた。
何はともあれ親も身体を丈夫にするために何かスポーツをと考えていたようで、バスケに時間をかけることに反対される事は無かった。
バスケを始めて見れば、どうやらオレは視野が広いらしくパスが良く通る。
上手く行けば自然と楽しくなり、のめり込む。そしてまた上達する。それに比例して身体も丈夫になっていく。
持ち前の性格も手伝って、気付けば女子にも良くモテるようになっていた。
こんな風に良いことづくめで、だからオレはちょっと調子に乗っていたんだろう。
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「~っ、何でお前がっ…!!」
小学5年に上がる頃にはすっかりクラスの人気者の地位に着いていたオレは、ある日友人と思っていた男子に罵られていた。
ソイツはかなり仲が良い部類にいるハズの友人で、彼からいきなりそう言われ内心では動揺しまくりだった。
「えーっと、何の事だよ?」
和成クン何かしちゃった?なんて軽く続けてみるが火に油を注いだようなもので。
「とぼけんなよっ!!オマエは、もっと、」
そこまで言ってぐっと下唇を噛みしめるようにして言葉を切り、「…もう良い。じゃあな、高尾」そう言って踵を返して行った。
いつも下の名前で呼ばれていたのに急な名字呼びはオレの肝を冷やすのには十分だった。
何かしてしまったのか?謝った方が良い、のか?でも何に?
混乱してぐちゃぐちゃな思考では、ここ最近の言動を振り替える余裕も無く。
どうやって自宅に戻ったのかも分からず、妹が何か言っていたが返事をするのも億劫でそのまま自室のベッドに潜り込んだ。