第19章 空飛ぶ鷹は夢を見る ~高尾和成~
『イヤイヤ、これからだよ!あ、そうだ!バスケとかしてみたらどう?背が伸びやすいらしいよ』
「へー、バスケかぁ…。まだ学校でもやったこと無ぇっす、ね」
ちらりとを見遣れば目にはいるエナメルバッグ。もしかしたら彼女こそバスケ部だったりするんだろうか。
『ん?あ、私は弓道部なんだ!背が伸びやすいってのはバスケ部の友達から聞いて…って和くん!?身体透けて無い!?』
「へぇ、って、え、…はぁ!?」
オレの視線の意図を正確に汲み取ったらしき彼女の言葉に納得する間もなく、焦りを滲ませた指摘に慌てて自分の身体を見てみると、自分の身体を通して周りの景色が目に入る。
それを認識した瞬間、浮遊感のようなものに襲われ目の前が白くなった。
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「ああよかった…!!和成、お母さんが分かる…!?」
目を開けて見えたのは泣き笑いの母親の姿。
どうやらその時のオレはかなり命の瀬戸際に居たらしい。良かった良かったとオレをキツく抱き締める母親を見上げながら、ふっと夢で見たあの犬の姿を思い出して身震いした。
当時のオレには地獄の番犬ケルベロスだったと言われてもおかしくないくらい巨大で恐ろしい犬だったから、当然と言えば当然かもしれない。
(ちゃんと礼を言えば良かった、かも)
何となく、あの犬にどうにかされてたら現実でも命は無かったんじゃないかなんて思えて、ちらりと夢の中で会った彼女への罪悪感が沸いたが、もう会う事も無いのだろう。