第19章 空飛ぶ鷹は夢を見る ~高尾和成~
「はぁ、まぁ良いや。オネーサン、助けてくれてありがとーゴザイマス」
そうと決まればと言わんばかりに、言い損ねていたお礼を口にする。
現金なものだとは思うが、危険が去った今となっては"女に助けられた"という事実がやっぱり気恥ずかしくてどうにも素っ気ないものになってしまった。
オレってばオトナだなー、何て嘯いて照れ隠しするのが関の山だ。
『ふふっ、良いって事よ少年!!あ、私はっていうの。高校1年生になったばっかだよ』
なのに、そんなオレの言葉を聞いた彼女は、ちょっと面食らったように数回瞬きしたものの、すぐにくしゃっと顔を綻ばせて自己紹介してきたのだった。
「オレは高尾和成ってーの、小学3年生でっす!ヨロシクサン?」
何か全部見透かされているようで悔しいが、その笑顔に釣られるように口角が上がり、気が付けば自己紹介を返していた。
『おおぅ、最近の小学生はなかなかマセてんね。周りの男子だって下の名前でなんて呼ばないよ…。和くん、モテそうだねぇ』
悪戯を思い付いたみたいな子供っぽい笑顔で"オネーサンはキミの将来が恐ろしいよ…"と続けるサン。
年上の余裕が滲んでいるのが悔しくて下の名前で呼んでみるも、全く照れた様子はない。
(ちぇ、やっぱり年上だけあってガキからの呼び捨てごときでは動じない、か)
「イヤイヤ、そりゃ無いっしょ~」
『そう?運動とか得意そうと思ったけど?』
「あ~、身体動かすのは好きっすけどね…」
気持ちを切り替えて彼女の話に乗る。
身体を動かすのは割と好きだが、如何せんひ弱なためすぐにバテてしまうのだ。格好つかず自然と口ごもる。
小学生でモテるといったら頭いいヤツ、運動ができるヤツと相場が決まっている。残念ながら今の自分はどちらにも当てはまらない。
持ち前の頭の回転の良さと話術で主に男子とのコミュニケーションは上々であるし、女子とはそこまで話す事も無いので問題は無いが。