第19章 空飛ぶ鷹は夢を見る ~高尾和成~
オレには繰り返し見る夢がある。
繰り返し、と言うのは若干語弊があるか。正確には、ストレスが溜まった時や何かしら悩んでいる時。あるいは体調を崩してヨワッているとき等々。
状況は様々だが、必要とするとき必ずみる夢だ。
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彼女が初めて夢に出てきたのは、確か小学校3年の時。
今でこそバスケのおかげで体もしっかりしているが、その時のオレといったらまぁかなりのモヤシっ子で。
運悪く質の悪い風邪を引き、肺炎まで拗らせて入院していた。
うつらうつらするなかで夢を見て、ああこれ夢だなって何故か分かった。
フラフラと歩いている内に自分がいつのまにか殺風景で寂しい場所に居ることに気が付いて。
無性に怖くなって引き返そうとするのだが、足が動かない。それどころか、やたら大きな犬が吠えながら此方に向かって来るのが見えて心底震え上がってしまった。
「、ひ、」
『こらぁワンコロっ!!その子に近づくなぁっ!!』
流石にヤベェ、オレここで死ぬかも。
恐怖で声もでないオレの前に颯爽と現れたのが、見馴れないセーラー服に身を包んだ彼女だった。
彼女は肩にかけていたエナメルバッグを振り回し、犬を追い払ってくれた。
『キミ、大丈夫!?怪我無い!?』
「、あ、」
何で夢だからって見知らぬ子に危害加えようとしてんのよ私ぃぃ…!!
遠ざかっていく狂犬に安堵の息を洩らし礼を告げようと口を開くが、彼女が独り言のようにして発した言葉に俺は首を傾げる事になる。
「…は?これ、オレの夢だよ、な?」
『…え?』
それから暫くお互い私の夢だ、オレの夢っしょ、と言い合って。でも勿論結論が出る筈もなく。
こりゃ時間のムダだと思ったオレは早々にこの現象の解明を諦めた。妙に存在感の大きい、見知らぬ筈の他人が夢に出てきて居るだけと思うことにしたのである。