第18章 ラブコール量産法 ~花宮真~
さて、回想はこのくらいにしておこう。
『もう良いですね?後は二人で存分に話し合って下さい。では』
「っ、話はまだっ、」
電話を切ってすぐ、真に掛ける。出ろよ分かってんだろ。強制的に虫除けに協力させられたんだから詫びの一声でも貰わないと。
「…ンだよ」
『惚けんな、分かってるでしょ』
「チッ、…悪かった」
『…何て言うかよバァカ、でしょ。ったく、さっさと告白するかゲスを全面に出しなさいよ。そしたらモテッぷりも落ち着くでしょうよ』
謝罪させてやる、と意気込んでたものの実際に真が謝ったとなると驚きを隠せない。
何とか動揺を飲み込む。よかった電話で。直だったらバレていたに違いない。
「…それが出来りゃ苦労しねぇよこの鈍感」
『え?ゴメン何て?』
意識総動員で動揺を抑え込んでいたせいで真の言葉を聞き逃してしまった。
「!…うるせえ、お前と違ってあの子は純真なんだよ一緒にすんなバァカ!!」
『…あっそ。じゃあ私みたいな邪心の塊と喋ってる場合じゃ無いね悪うございました、もう掛けません、じゃあね!!』
「あっ、オイコラっ!!」
捲し立てて乱暴に電話を切り、電源もOFFにする。
ああ、またやっちゃった。
真はどう転んでも良いヤツとは言えないし敵と見なした相手に容赦なんてしないしとにかく最悪だ。
ならそんなヤツにずっと片思いをしている私は一体なんだと言うのか。
でも懐に入れた人間には、分かりにくいが上部だけではない優しさをくれる事も知っているから嫌いになれない。
『折角、離れたのになぁ…』
傍で自分じゃない子への賛辞を聞かされ続ければ(しかもお前と違っての枕詞付き)、自分の思いを告げる勇気など出よう筈もなく。
ならば完全にこの想いを絶ちきろうと思って傍を離れたのに、胸に燻る気持ちは消えてくれそうにない。
こうして声を聞いただけで嬉しいんだから全くどうかしてるわ。
今日はもうやけスイーツでも食べに行こう。レオ姉の部活終わってたら付き合って貰おっと。
そんな私には、真が電話の向こうで人生の終わりみたいな顔をしていたなんて知る由も無かったのである。
本当は私と同姓同名の子なんて居ない、全部お前の事だよ分かれよバァカ、なんて真っ赤な顔で言われるのはもう少し先の話。
fin
→おまけ、あとがき