第17章 フェアリーテイルをご一緒に 赤司
『ん?ああ、赤司って言うのはこのバスケ部の主将でね。いっつも仕事一杯抱えてて、しかもこなせちゃうもんだからまた増えて、って言うのを繰り返す不器用なヤツさ』
そいつの眼もオマエみたいに凄く綺麗なんだよ。またアイツが何かを楽しいって思えるようになったら良いんだけど。その為だったらいくらでも力になるんだけどなぁ。そんな事を言いながら両手で僕の頬っぺたをムニムニする。
(…)
そう言えばが僕のことをどう思ってるか聞くのは初めてだった。
中学2年の全中優勝以降、色々変わってしまった僕達の一番近くに居た彼女。思えばいつだって彼女は非難するでもなく絶望するでもなくそっと寄り添うようにして傍で見守ってくれていた。
だが、僕がバスケを楽しめなくなっていた事に気が付かれていたとは思わなかった。元々勝つことのみに目を向けている奴だ、才能の開花でその傾向が強くなっただけ、と捉えている者が殆どだと思っていたのに。
まぁ、僕の場合は"才能の開花"と言えるものでは無いのだが。
しかも"不器用"と称されるのも初めてだ。"赤司征十郎は完璧だ"と認識されるよう振る舞っていたし実際周囲の認識も概ねそうだった筈だから。
完璧であれと父から強いられていたにすぎないが、その事を話した覚えは無いと言うのに。
僕が完璧ではないと知り、その上で僕の力になりたいと言ってくれる彼女。
ああ、今猫で良かった。もし人の姿だったら柄にもなく泣いてしまいそうだし、彼女を心のままに思い切り抱きしめてしまいそうだ。
照れ隠しに頭をぐりぐりと彼女の手に押し付ければ、"なんだよ、甘えん坊だなオマエ"と言いながらもそっと背中を撫でてくれた。
それがまた嬉しくてついついされるがままにしてしまう。
『うーん、待ってろって言われたけどこっちは終わったし。オマエの事も有るから赤司んとこ行って見ようか』
不覚にも当初の目的を忘れかけていた所に降ってきたの言葉。