第17章 フェアリーテイルをご一緒に 赤司
幸い生徒はほとんど居らず、あれから誰にも見咎められる事なく部室棟にたどり着く事が出来た。
体育館は既に灯りが消えており、騒ぎそうな小太郎辺りが残っていないことを祈りつつバスケ部の部室へ近づく。
とそこに一陣の風が舞い、唾液と牙で脆弱化していた紙を吹き上げてしまった。
慌てて後を追うが、運悪く用水路へ吸い込まれてしまった。さすがに水の中に入るのは危険だろう。
(…まぁを生徒会室に誘導すれば良いか)
紙を見せその上で生徒会室へ連れて行き、パソコンでこういった事象の解決策でも調べて貰えたらと思ったのだが、こういった事態に備えwordのソフトは立ち上げたままにしてある。問題は無いだろう。
幸運な事にドアは薄く開いており、聞き耳を立てるがカリカリとシャーペンがノートの上を走る音がするのみで、会話等は聞こえない。
玲央達はもう帰ったと考えて良さそうだ。
(、居るのか?)
伝わらないと知りつつ声を出しながら室内へ入る。やはりニャーン、と言う音が聞こえた。
『赤司お疲れー。ちょっと待ってね今終わった…ってあれ、猫…?』
こちらを見ずに返事を寄越した彼女だが、サラサラと何事か書き付けてからこちらを見て目を丸くした。
『んー?何か赤司が入って来たーって思ったんだけど、オマエかぁ。っと、コッチ来るかい?』
(おい、その格好は…!!)
そう言いながら、すっとしゃがんで手を差しのべてくる。無理強いすることなく、少し離れた所で待っているその姿には好感が湧くが、なんでスカートなんだと頭を抱えたくなる。
不可抗力だがこの目線だと刺激の強い光景が目に入ってしまう。元に戻った後、がこの事を思い出さないのを祈るばかりだ。
(、僕だ、赤司だ)
『ふふ、懐っこいなオマエ』
にゃー、にゃーと声を出しつつ近寄って行く。差し出された手に鼻先を擦り付けるようにすれば目を細めて耳の後ろやら喉やらを撫でる。
気付けば勝手にゴロゴロと喉を鳴らしていた。
『ん?オッドアイかオマエ、綺麗だね。毛並みも良いし飼い猫…?迷い混んだのか?ふふっ、何だか赤司そっくりだな』
(?)
の言葉に思わず反応すれば、ニャッという声が挙がる。