第11章 離れる心
リヴァイside
ダグラス・ノーマンの言うことは、もっともだった。
まだ16歳のユナは、この先もずっと、地下街で生きて行かなきゃならない。
治安も悪く、決して余裕のある生活じゃない。
おまけにユナは病を患っている。
この前の冬も、かろうじて助かったが、今後はどうなるかわからない。
これからも、あいつは苦しんでいく。
最悪、病に命を奪われてしまうかもしれない。
だが、地上に行けば、確実にここよりは良い医療環境がある。
少しでも、ユナの苦痛がなくなるなら、いっそのこと・・・
「・・・はっ、世話ねぇな。こんなチャンスに俺が、ユナを放したくないと思ってるなんてな・・・。」
俺は、ユナへの気持ちを自覚するようになってから、あいつに関する独占欲が強くなった。
ガキの頃から、いつも一緒にいて、確かにケニーの言うとおり妹みたいに思っていたのかもしれねぇ。
明るく、誰にでも優しくて、よく働く。
いつも一生懸命で、自分がつらくとも頑張ろうとする。
そして何より、こんな俺に笑いかけてくれる。
そんなユナの存在が、いつの間にか俺の中では大切なものになっていたんだ。
俺を見上げる瞳も、俺を呼ぶ声も、俺に触れる指先も・・・
すべてが愛おしい。
柔らかい唇、指通りの良い髪、細い肩、小さな背中・・・
ようやく抱き締めることが出来た。
その大切な最愛の人の幸せを願うことは、当たり前のことだ。
俺の欲望だけで、ユナの未来の可能性を奪うことは、あってはならない。
俺は、決意を固めて歩き出す。
ユナが待っている家へ。