第11章 離れる心
翌日、リヴァイは1人で例の商人のもとを訪れていた。
ユナには言わずにここへ来たリヴァイ。
何も知らずにファーランと家にいる彼女を想う。
「・・・クソッ」
(何を迷う必要があるんだ・・・まずは確かめてからだ)
リヴァイは、ファーランの知り合いに商人への取り次ぎを頼んだ。
商人はダグラス・ノーマンという中年の男だった。
その彼の隣には、先日、ユナを狙ったゴロツキといたステッキを持った紳士風の男性が佇んでいた。
「・・・!」
(この男、ノーマンの手先だったか)
「わざわざ足を運んでもらって申し訳ないね。はじめまして、私はダグラス・ノーマン。あなたはリヴァイ君、で良かったかな。きみは有名だからね。私の耳にも名は届いているよ。」
ノーマンは穏やかな話口調で挨拶をしてくる。
「余計なおしゃべりをしに来た訳じゃない。さっさと本題に入ろう。」
リヴァイはさっそく話をきり出した。
ノーマンの話は、ファーランが持ち帰った情報と内容は一致していた。
「そうか。何か裏があるのかと思ったが・・・どうやら違うらしいな。」
リヴァイは、はっきりと言う。
すると、ノーマンは
「この地下街に、ユナさんの姿を見た時は本当に驚いた。亡くなったマヤちゃんにそっくりで・・・。友人にその話をすると、一目見たいと言ってね。小さな子供たちの面倒をみたり、世話を焼いていたユナさんの人柄にも惹かれたようだよ。まだ16歳だろう?ずっとこの先も、この地下で生きていくのは、16歳の少女には過酷なことも多いだろう。」
「・・・・・・。」
リヴァイは黙って聞いていた。
「友人は、ユナさんをマヤちゃんと重ねてしまっているのかもしれない。だが、最愛の娘を失って、生きる希望を見いだせなくなってしまったところに、ユナさんの存在が現れて、彼は変わろうとしているんだ・・・。どうにかしてやれないかと思ってね。」
ノーマンは、リヴァイを見据える。
「私が言うのもなんだが、友人は良い人間なんだ。仕事も真面目で思いやりもある。下級だが貴族の位もある。きみの仲間・家族でもあるユナさんを悪いようにはしない。どうか、検討してほしい!」
そう言って頭を下げるノーマンを、リヴァイもまた真剣な目で見るのだった。