第10章 動き出す歯車
そう思っていると、
「邪魔なガキ共がいなくなって良かったぜ。さあ、あんたは俺たちと来てもらう。」
と私の腕をつかもうとした。
私はヒラリと男の手をかわして、ナイフを持っていた男の手を蹴りあげる。
ナイフは手から飛んでいき、男は手を押さえる。
「この女、調子に乗るなよ!」
男たちは私に襲いかかるが、うまくかわしていく私にイライラしているようだった。
(動きが遅いな・・・)
1人の足を回し蹴りで払うと、彼は倒れ込む。
すると、落ちていたナイフを見つけて起き上がり、私にナイフを振り上げる。
ヒュッとかわしていく。
「おい、そいつに傷はつけるなって指示だぞ!」
もう1人の男が止めに入る。
(誰かの指示?・・・どういうこと?)
疑問に思っていると、男たちの後ろから、別の1人の男性が現れた。
「お前たち、何をしているんだ。女性1人満足にエスコートできないとは・・・。」
先のゴロツキ2人と違い、ステッキを持った品のある裕福そうな装い。
そして私は、彼の気配に気づかなかったことに冷や汗が出た。
(この人、まずいかも・・・)
『・・・どちら様ですか?』
「これは失礼、名乗る程の者ではないのですが、あなたに傷をつけることなく連れて行かなくてはならないのです。どうか、ご容赦ください。」
と、男性はうやうやしく私に頭を下げる。
しかし、その動作に隙はない。
『それは・・・』
男性に答えようとした時、
「それは容赦できねぇ話だな。」
リヴァイがナイフで男性に斬りかかる。
男性は持っていたステッキで受け、うしろに跳び、構える。
「こいつに何の用かは知らねぇが、俺が聞こう。」
相手にナイフを向けて、リヴァイは私の前に立つ。
私のうしろには、ファーランがゴロツキから私を守るように立っていた。
「これはこれは、地下街では有名なリヴァイ君。あなたとは闘いたくないので、これで失礼します。今日のところはね。」
そう言って、去って行った。
「大丈夫か?ユナ。」
『うん・・・なんとか。』
「子供たちが血相かえて飛び込んで来たから、何事かと思って、リヴァイと急いだんだよ。とりあえず、無事で良かったよ。」
ファーランはホッとしたように、ため息をつく。
リヴァイは何か考え込んでいた。