第10章 動き出す歯車
私は、近所の子供たちと一緒に出掛けていた。
その日は、地上から複数の商人が来ていて、地下街の有力な商人たちとの商談があるようで、定期的に行われているものだった。
そのため、通りは随分と人で賑わっていた。
ふと、視線を感じたので、チラリと目を向ければ、私の顔をじっと見ている人物がいた。
(・・・私を見てる?なんだろ?)
知っている人でもないし、よくわからないが、なんとなくその場から離れた。
子供たちと帰る時も、どこからか視線を感じた。
(なんか・・・変なの)
その後、子供たちを送って家に戻る途中、誰かに尾行されている気配がした。
私はいつも通らない抜け道や遠回りをして、尾行を撒いて帰宅した。
(なんだったんだろう・・・?)
翌日から、出歩いていると、いつも視線を感じる。
尾行を撒いて、まるで常に誰かとかくれんぼをしているようだった。
(リヴァイやファーランに相談しようかな・・・)
そんな状態が続いて、数日が経過していた。
さすがに毎日こんな環境では、まいってしまう。
今日も、私は近所の子供たちと歩いていた。
前から2人の男がやって来る。
通路の端に寄り、通り過ぎようとすると、男たちは私の進路をふさぐ。
『・・・何ですか?通してほしいんだけど。』
「あんた、ユナ・スノーベル?」
「おとなしく、俺らと一緒に来てくれねぇかなぁ。」
彼らは、ナイフをちらつかせて、私の名前を言う。
『・・・人違いじゃないですか?』
私はにっこりと笑顔を貼り付けた。
「いや、人違いじゃねーよ。ちゃんと調べてるからな。」
ニヤリと1人の男が言い、私にナイフを向ける。
「「姉ちゃん!」」
一緒にいた子供たちは、私にしがみついて怯えている。
『・・・大丈夫だよ。』
私は子供たちの頭を撫でて、冷静に振る舞う。
『みんな、ここから先に帰ってて。ね?』
「でも・・・。」
と、子供たちは心配そうにして動けないでいる。
『大丈夫だから。・・・ね、お願い。』
(リヴァイ達に知らせて)
私は1人の子にしか聞こえないように言った。
「・・・わかった。みんな、帰ろう?」
そう言って、子供たちは何度も私を振り返りながら走って行った。
(無事にここから離れてくれて良かった・・・)