第9章 想いの方向
ユナside
私は、エプロンをして家の掃除をしていた。
(ここの床の汚れ、気になるんだよね・・・)
今日は徹底的に床掃除。
本格的に冬になる前に、少しでも掃除しておきたくて、最近コツコツ頑張っていた。
バケツの水で雑巾をゆすいで、立ち上がろうとした時、一瞬視界が歪んだ。
『!?』
ガクッと床に両膝と両手をついた。
(・・・立ちくらみかぁ)
少し目を閉じてから、ゆっくりと動いた。
(今度は大丈夫かな)
また掃除を始める。
(ちょっと疲れてるのかもしれない・・・早めに切り上げて買い物に行っておこう)
そう思って、私は少しずつ片付けながら手を動かした。
ダイニングでは、ファーランが書類を整理していた。
私はエプロンを外して、これから買い物に行って来ることを伝えると、ファーランはかわりに行くと言ってくれた。
私は大丈夫だと断って、コートを羽織り、家を出る。
(昔は1人で外に出ようものなら、リヴァイに怒られたけど。もう16歳だし、この辺りのこともわかるようになったし、いつからか私が1人で出掛けても大丈夫になったなぁ)
なんて、昔のことを思い出しながら歩いていた。
『それにしても・・・今日は寒いなぁ。早く買い物終わらせて帰ろう。』
まださっきの疲労感もあり、どことなく体を動かしづらい。
私はお店までの道を急いだ。
買い物を無事に済ませ、外に出ると、雨が降ってきていた。
おまけに冷たい風も吹いている。
『・・・さ、寒い・・・っ!』
少し、胸が苦しくなるような感覚が襲う。
(今夜あたり、まずいかもしれない)
そんな嫌な予感もあり、私は雨の中、帰り道を急ぐが、途中で呼吸が苦しくなってしまう。
雨で濡れて重くなった体をどうにか動かし、雨宿りできる場所を探した。
近くに無人の家屋を見つけて入る。
雨風はしのげるが、濡れた体は冷えていくばかり。
息も荒くなり、寒さに体が震える。
『はぁ・・・はっ・・・はっ・・・はぁ・・・はっ・・・』
壁にもたれかかり、必死で意識を保つ。
『はぁ・・・はっ・・・リ、ヴァイ・・・』
(・・・助けて・・・)
私は、無意識にリヴァイの名前を呼んでいた。
(そう言えば、前にもこんなふうに、リヴァイに助けを求めたことがあったっけ)
私はそこで、意識を手放した。