第9章 想いの方向
リヴァイside
ソファーで眠るユナを抱きかかえて、部屋まで運ぶ。
すやすやと寝息が聞こえる。
久しぶりに遠くまで出掛けた上に、そろそろ寒くなってきた。
用心に越したことはない。
ユナをベッドに寝かせると、胸元にあのペンダントが小さく輝いていた。
自分のあげたものを、大切にすると言い、身につけてくれたことが、俺にはこれまでになく嬉しかった。
ユナのつけているペンダントの羽のモチーフに触れていると、眠っていたユナの手が、俺の手を腕ごと両手でつかみ、『うぅ~ん・・・んにゃむにゃ・・・』と寝ぼけていやがる。
俺は、片腕をユナにつかまれたまま、動けなくなってしまった。
「ちっ。」
(起こしちまうかもしれねぇし、どうするかな)
考えながら、ふと、ユナの寝顔が視界に入る。
俺は、もう片方の手でユナの頬を撫でる。
「・・・・・・お前が、大事だ。」
そう言って、俺はユナの額に口づけをした。
そして、手を外して毛布を掛け直し、部屋を後にした。
その後、ダイニングに戻ってから、ファーランと夜更けまで仕事の話をした。
翌朝、すでにユナは朝飯の準備をしていた。
『あ、おはよう!リヴァイ!』
いつものようにほほ笑みながら挨拶をくれる。
「あぁ。・・・よく眠れたか?」
そう俺が聞くと、
『うん。昨日リヴァイが私をベッドに運んでくれたの?・・・ごめんね、手間かけさせて。ありがとね。』
申し訳なさそうに言ってくる。
「いや、そろそろ寒くなってきたからな。気をつけろよ。」
『・・・うん、いつもありがとう。』
そんなやりとりをしていると、ユナがカップに何かを注いでいる。
『これ、紅茶っていうお茶なんだって。昨日のお店で香りがいいから買って来ちゃった。リヴァイも飲んでみて!』
差し出されたカップから立ち上る湯気と独特の香り。
口にしてみる。
「悪くねぇ。」
珍しく、俺にしては気に入ったものだった。
朝飯まで俺は、その紅茶を飲みながら、ユナとの何気ない会話を楽しんでいた。