第1章 大好きな家族
『父さん、行ってらっしゃい!気をつけてね!』
今日も朝早くから父さんは仕事に出掛ける。
「あぁ、行って来る。ユナも気をつけてな。何かあったら地下に行くんだぞ。」
父さんは大きな手を私の頭にのせて、優しく、でも真剣な顔で言う。
『うん、大丈夫。わかってるよ。』
父さんの目を見て、私は頷く。
そんな私を見て父さんも頷いて、
「よし。」
と言って、いつもの笑顔でドアを閉めて行った。
我が家は、奥の部屋に地下室がある。
普段は、水の入った樽や食糧などの備蓄品を保管する場所として使用しているのだが、いざという時の避難場所として父さんと決めていた。
[いざという時]とは?
昼間、父さんが仕事でいない時に家に強盗なんかが入って来た場合。
留守番のまだ幼い私だけでは、命の危険もある。
だから父さんは地下室を作った。
ちなみにかなり手が込んでいて、地下室にはベッドもある。
普通に生活出来るだけの造りになっている。
入り口は、奥の部屋の端の壁と床に細工してあって、なかなか一目では地下室があるなんてわからない。
さすが父さん。