第1章 大好きな家族
『あの地下室を父さんが作っただなんて、父さんって器用なんだなぁ。もしかして仕事って大工さん、とか?』
私は、ふふっと笑いながら朝食の洗い物に取り掛かる。
『♪~♪~♪』
昔の記憶で、よく母さんがうたってくれた歌を鼻歌でうたいながら、ふと母さんを思い出す。
母さんは病気で、いつもベッドにいた。
それでも体調の良い時は、ベッドに身体を起こして私に本を読んでくれたり、歌をうたってくれた。
大好きな母さんのベッドで一緒に寝たりもした。
でも、具合が悪いときは額に汗を浮かべては、苦しそうに息をしていた。
私が4歳の時に、母さんは病気の苦しみから解放された。
それは、まだ春が訪れる前の、寒い寒い冬の日のことだったんだ。
それから私は、父さんと二人だけになった。