第8章 年頃
リヴァイside
今日は特別な依頼でユナと仕事に来ている。
闇の露店商の店を訪ねて、品物を高値でさばいているブローカーの尻尾をつかむ。
地下街では、元々悪質な店は少なくなかったが、近頃じゃ全体的に品薄や値段が飛び上がり、市場は荒れてきている。
誰かが裏で糸を引いているだろうと、調査の依頼が入った。
そんなに危ない訳じゃないし、ユナを連れて、ちょっとした買い物客でも装えば、カムフラージュにもなる。
前々から、比較的危険性の低い仕事には時折同行させていた。
今回もそんなもんだ。
お互い、マントを羽織り、フードを被る。
闇の市場の調査だ。
「おい、ユナ。はぐれるなよ。」
後ろを見れば、ユナは物珍しそうにキョロキョロと辺りを見回している。
「はぁ、聞いているのか。」
そう言うと、俺の顔を見るなり、にこっと満面の笑みを向けて来る。
「・・・!」
『リヴァイ、ここすごく賑やかだね!初めて来たけど、見ているだけでもとっても楽しい!連れて来てくれてありがとう!』
まぁ、俺もお前のその楽しそうなツラを、見ているだけで楽しいと思う。
・・・いつの間に、俺はこんなふうにユナに対して思うようになったのか。
ガキの頃から一緒にいたからか、お互い同じ境遇だったからか。
いつからか、「家族」のような「妹」のような存在になっていたユナ。
そして今は・・・守ってやりたいと思えてならない。
ずっと傍にいて、俺に笑いかけていてほしいと思う。
ケニーに頼まれたからじゃない、俺自身が本当に願っている。
ユナのことは、何よりも大切なんだ。
『リヴァイ、あれはなんのお店なの?』
ユナは近くの店を指さした。
(あれは・・・)
「装飾品、だな。行ってみるか?」
『うん!』
ユナは嬉しそうに声を弾ませて返事をした。
人が多くなって来やがった。
ふと、後ろから
『・・・リヴァイ!』
とユナが俺を呼ぶ声がする。
振り返ると俺から人2~3人分離れた所で、ユナは今にも人ごみにのまれようとしていた。
「チッ!」
俺はすぐさま引き返して、しっかりとユナの手をつかんだ。
「離すなよ。」
『うん。』