第6章 守る術
部屋に戻ったリヴァイは、傷だらけになったユナをケニーが鍛えていることに納得してはいなかった。
(確かに治安の悪い地下街では、ある程度の力は必要だ。しかも女だしな。甘くみられやすいのもある。だが、なぜわざわざ地下街に連れて来る必要があったんだ。まるで地上から身を隠すように。ケニーの奴、ここ何年も顔を見せなくなったと思ったら、ひょっこり現れやがって。)
「ケニーめ、どういうつもりだ・・・」
そして、先程の自分に向けられたユナの笑顔を思い出す。
「・・・!?」
一気に顔が赤くなる。
(クソッ、なんだ?この感情は・・・)
ドサッとベッドに仰向けに倒れこみ、天井を見上げる。
「ここはクソみてぇな場所だが、あいつが来てから悪くねぇ。」
リヴァイが穏やかな表情で、そう呟いていたのをユナは知る由もない。
ある日、ユナは地下街の路地の店に1人で向かっていた。
行く先は、ケニーが信用している店だ。
いつもなら、生活のための雑貨はケニーかリヴァイが買って来るが、最近ケニーは顔を見せないため、リヴァイに頼もうとした。
しかし、そのリヴァイが今朝から姿が見えない。
そのため、ユナは自分で行こうと外に出たのである。
『テーブルの上に書き置きもしてきたし、大丈夫だよね。』
ユナは、前にケニーと一緒に数回訪れた店への道を思い出しながら、出来るだけ目立たないように歩いていた。
治安の悪い地下街では、何が起こるかわからない。
いつタチの悪いゴロツキにからまれるかもしれないのだ。
もう少しで目的の店、という所で、ニタニタと気味の悪い笑みを浮かべた男がユナの前にふらりと現れた。
「お嬢ちゃん、かわいいねぇ~。お兄さんと遊ばない?」
ユナが男を避けて行こうとするも、男はユナの進路を塞ぐように移動する。
『あ、あの、急いでいるので・・・通してください。』
怖さで声が震える中、どうにか発した言葉だった。
「はははっ!本っ当にかわいいなぁ、お兄さんが楽しいことを教えてあげるから、だからおいで。」
男はユナの腕をつかみ、嫌がるユナを引きずるようにして連れて行く。