第5章 出会い
地下街での生活は初めてのことだらけだった。
ここには細かいルールがあって、私の暮らしてきた環境とは違い、常に危険が溢れている。
まずはここでの生活について、ケニーは一通り教えてくれた。
「あとわからねぇことはリヴァイに聞けよ?」
と最後には必ずこうだ。
(リヴァイ、私と話してくれないのに・・・。)
この家は部屋数があって、私の部屋は奥だ。
廊下ですれ違って声を掛けても、返事はなく素通りして行くリヴァイ。
(嫌われてるのかな・・・。いきなり余所から来て、私、邪魔だよね。)
『はぁ・・・』
なんとなく悲しくなって、ため息が出た。
すると、急に目の前がぼやける。
『あれ・・・?』
思わず顔の前に手をやると、涙がポロポロと次々にこぼれてくる。
『あれ?・・・あれ?なんで?どうして??』
(止まらない)
『うっ・・・くっ・・うぅ・・・・』
色んな感情で、胸が押し潰されそうで苦しかった。
私は、そのまま廊下に崩れるように座って、溢れ出る涙を必死に何度も何度も拭っていた。
すると、グイッと身体を横に引き寄せられた。
ふわっと、ケニーの上着のにおいがした。
「何やってんだ・・・こんなとこで。これからお前は強く生きなきゃなんねぇんだぞ。ロードとリイサの分もな。だから・・・今は好きなだけ泣いとけ。」
ケニーは私の横にしゃがんで、私をすっぽりと包み込んでくれていた。
『うぅぅ・・・ケニー・・・。うぅ・・・父さん・・・・。』
私はケニーの上着をつかんで、身体を震わせながら、今まで無意識に我慢していた涙を流した。
急に知らない所に連れて来られて、父さんも死んでしまって、これから私はどうしたらいいのか、不安で不安で仕方がなかった。
気持ちの整理が追いつかず、現実なのに夢を見ているようだった。
私はケニーの腕の中でわんわん泣いた。
その光景を見ていたリヴァイは、自らの母との別れを思い出していた。