第19章 力の制御
リヴァイ side
「ユナ、もう少しガスを節約しろ。」
『はいっ!』
「今のは最後まで振り切れ。お前は力はないが、瞬発力がある。バネを使って動きに勢いと回転を加えろ。」
『はいっ!』
「もっと速くだ。身軽に動け。」
『はいっ!』
訓練兵団では我流で鍛練を積んできたのであろう、粗削りで癖のある動きをするユナ。
・・・もともと、ユナの動きは悪くない。
もう少し要領を良くすれば、格段に向上がみられるはずだ。
地下街での処世術が根底にあるためか、どことなく俺やケニーの小さな癖が所々で垣間見える。
だが、こいつの持ち合わせた身の軽さと俊敏さが何よりの武器だ。
俺までとはいかないが、突然の不意打ちで巨人に襲われても簡単に巨人につかるなんてヘマはしないであろう動きだ。
(要所要所の動きの修正、・・・あとは経験だな)
ユナはというと、いつも見せるあどけない表情や面影は微塵も感じられない程に、とても真剣に訓練を続けていた。
(俺の傍にいたいと、役に立ちたいという理由でユナは戦場に立つ・・・ユナが戦士になることは本意ではないが、俺はそんなユナを調査兵団の精鋭に育て上げようとしている)
「はぁ、・・・矛盾だな。」
自分の口からため息が漏れる。
額に汗を滲ませ、何度も立体機動で宙を舞う。
ブレードを握り巨人の模型に振り下ろす。
素早く体勢を切り返して、また舞い上がる。
「いい動きだ。」
基本的に素直なユナは、少しずつ動きに改善がみられる。
このまま行けば、次の壁外調査で成果を出せるだろう。
「複雑そうだね、リヴァイ。」
隣で見ていたハンジがボソッと俺に言う。
「あ?」
「ユナ、君に会いたくて調査兵になったんだろう?でもリヴァイは本当はユナに兵士になってほしくない。彼女は君のためなら、どんな過酷な任務も頑張るだろうね。そしてまた、兵団の期待も背負わされるような形になってしまった。私としては、素直で真面目なユナが無理しないか心配だよ。リヴァイもそう思うんでしょ?」
「・・・強くなるのは結構なことだ。壁外で命を落とす確率は低い方が俺にとっても助かる。だが、これが本当にあいつのためなのか分からねぇ。」