第16章 探し物
リヴァイside
今日は調査兵団新兵の入団式だ。
(・・・毎度、毎度、面倒くせぇ)
俺は中央でエルヴィンが力説しているのを尻目に、新兵達の顔を見ていた。
まだ壁外や巨人に対して未知の領域なこいつらは、それぞれ目付きが違う。
すでに覚悟を持った者。
戸惑いのある者。
死への恐怖を宿した者。
一応、新兵のリストはもらっていたが、うるさいハンジのクソメガネにつかまって、全部に目を通せなかった。
俺は新兵一人一人の顔を見て、少しでも頭の片隅に置いておこうと思っている。
ハンジが俺の隣に来て、新兵をキョロキョロと眺めている。
「・・・何やってる。クソならさっさと出して来い。」
「いやぁ?・・・確か今期の新兵に訓練兵団でも実力のある子が数人入ったんだけどさぁ、私のお目当ての子の姿がないんだよねぇ。おかしいなぁ。」
「おおかた、直前になってビビって逃げたんだろう。そういう奴も少なくない。」
「・・・そうかなぁ。彼女は勉学の成績も優秀で、おもしろい論文を書いた子でね。いろんな話が出来そうだなって期待してたんだけどなぁ!」
ハンジは、イカれた目をギラギラさせて、鼻息を荒くして言う。
「・・・はぁ、そいつは逃げた方が良いだろうな。」
俺はボソッと呟いた。
「もしかして、まだ来てないのかな?ユナちゃん。」
「・・・ユナ?」
俺はその名前を聞いて、懐かしさと、切なさと悔しさで胸を締め付けられた。
(ここで同じ名を聞くとはな・・・)
そこでハンジは思い出したように、
「そうそう、訓練兵団でも成績優秀だったユナ・スノーベルだよ。リヴァイにも新兵の資料、渡したよね?」
と言った。
「・・・ユナ・スノーベルだと・・・?」
(いや、まさか・・・ユナは死んだはずだ)
だが、もしも、万が一の可能性があるのなら・・・どうしても確かめたかった。
「ちょっと兵舎に行ってみようかなぁ」
ハンジは兵舎の方に向かって行く。
(俺がその名前を見逃すはずがない・・・目を通してない方の資料か・・・)
「待て。俺も行く。」
「えぇ?・・・なんで、リヴァイが?」
「・・・入団式に遅刻なんて、いい度胸してやがるからな。どんな面してるか拝みに行ってやる。」
そう言って、俺はハンジと兵舎に向かう。