第16章 探し物
ユナ side
今日は調査兵団への入団式がある。
まだ朝日がのぼったばかりの時間に、私は眠い目をこすってベッドから起き上がり、壁に掛けてある兵団服を見る。
(・・・今日、会えるかな)
訓練兵団の頃から、「兵士長」の噂はよく耳にしていた。
すごい実力、能力の持ち主だと。
でも、リヴァイ1人だけ。
ファーランは一緒に入らなかったようだ。
その噂の「兵士長」は、私の知っているリヴァイで間違いないと思うけど、彼はどうだろう。
あれから4~5年経っている。
私のことが分かるだろうか。
いや、それ以前に私が兵士になったなんて思ってもみないはず。
いやいや、むしろ・・・怒られそうだ。
『「こんな危険な所に、どうしてお前がいる?帰れ。」・・・とか言われそう、アハハ・・・』
でも、開拓地で調査兵団にリヴァイがいると聞いた時から、憲兵達に捕らわれた時から、私はリヴァイの元に帰りたかった。
私の目的はそれだけだ・・・。
彼には彼の、調査兵団に入った理由があるはず。
私は彼の邪魔にならないよう、一目会うことができたら、それだけで十分幸せだ。
あとは、巨人に喰われてもかまわない。
私の心臓は・・・リヴァイに捧げたい。
私は兵団服を手に取り、袖を通していく。
胸元には、あのペンダントをしっかりとつけて・・・。
早くに食堂で朝食を済ませ、式まで時間があったので、兵舎の中庭の芝生に空を仰いで寝そべった。
「わぁ、雲が流されてく・・・」
風が心地良い。
私は目を閉じて、ここに来るまでの訓練のことを思い返していた。
『・・・ん?』
気がつくと、私は寝てしまったようで、兵舎には人の気配がない。
『・・・やばっ!寝過ごした!?』
ガバッと飛び起きて、私は入団式の広場へ走る。
『初日から遅刻とか・・・あり得ない私!』
走っていると、ふと胸元に違和感を感じた。
『あれっ?』
私は立ち止まり、胸元に手を当てる。
(・・・ない)
ペンダントがない。
『うそ、落とした?そんな・・・どこで?』
私は泣きそうになる。
(大切なものなのに、こんな日になくすなんて!)
急いで進行方向をかえて、私はペンダントを探しながら来た道を戻った。
私にとって、それほど大切なものだった。