第8章 姫巫女と最初の一週間
「何か占うの?」
シェリルの問いに、シオンは小さく頷く。
「少し、気になることがあって……」
すると、キラキラとした金色の細長い身体が宙を踊った。
『そなたらはもう休め。これほど見られていては、シオンも集中できぬだろう』
月映の言葉に四人は頷き、自分のベッドへ入る。
ヒマワリは、渋々といった様子だったが。
「ありがとうございます、月映さま」
『なに、大したことはしておらぬ。……我も消えておこう』
そう残して、月映も姿を消した。
シオンは静まり返った室内で、ゆっくり呼吸を整えて占いを始める。
この、意識が研ぎ澄まされていく感覚は好きだ。
目を閉じて、凪いだ湖面をイメージしていき、意識を六壬式盤に集中させる。
占うのは、ハリー・ポッターのことだ。
必要な情報は、それとなく本人から聞き出している。
情報をもとに天盤を回し、弾き出された結果にシオンは息を呑んだ。
明らかな『凶兆』が出ている。
一生に一度も見ないくらいの、珍しい凶兆の卦。
周囲を大きな台風で巻き込み、ほんの些細なきっかけで命を落としてしまうような。
これが、父の言っていた『災厄』なのだろうか。
まさか、こんなに酷い結果が出るとは思ってもいなかった。
『シオン……どうした……?』
「ううん……何でもないです……」
シオンを心配して、再び月映が姿を現す。
大丈夫。何も恐れることなどない。
シオンはポケットに入れていた、父からの紙鳥を開く。
友達ができたこと、学校生活が楽しいことを書いた。
そして、ハリーと出会ったこと、彼を助けたいことも……。
父の手紙に書かれていることは多くない。けれど――……。
――『好きなようにしろ。力が足りないなら言いなさい』
そんな、不器用ながらも、暖かい言葉が並んでいた。
細長い、少し神経質さを窺わせる字をなぞる。
「わたしにできることは何でもする。この先何が起こったとしても……何も、恐れることはない」
自分だけが知っている、恐ろしい未来。
この占いが外れることが、一番良いに決まっている。
けれど、確信があった。
どんな形かは分からないが、この占いに出た未来は必ず訪れる。
ならば、自分のやるべきことは決まっていた。