第8章 姫巫女と最初の一週間
「それ、汽車の中でロンが話してた……?」
すると、ハリーはその記事を見て立ち上がった。
「ハグリッド! グリンゴッツ侵入があったのは、僕の誕生日だ! 僕たちがあそこにいる間に起きたのかもしれないよ!」
しかし、今度は決定的だった。
ハグリッドは明らかに、ハリーから目を逸らしたのだ。
結局、ハグリッドは曖昧に言葉を濁し、ハリーにロックケーキを勧めた。
――「こんなことが起きると、陰に『例のあの人』がいるんじゃないかって、みんな恐がるんだよ」
ハリーの誕生日、闇の魔法使いや魔女の侵入の可能性、すでに空になっていた金庫……。
すでに、何かが裏で動いているのだろうか。
* * *
夕食に遅れないよう、三人は校内へ戻ることにした。
どう考えても、ハグリッドの態度は妙だ。
それはハリーも感じているようで。
スネイプがハリーに向けている感情の意味も、グリンゴッツ侵入事件も、ハグリッドは恐らく何か知っているのだろう。
人間の行動には必ず理由がある。
喜ぶのも、悲しむのも、怒るのも……当然、隠し事をするのも。
ならば、彼をそうさせる『理由』とは、いったい何なのだろう――……。
分からないのなら調べればいいのだが、シオンにはそんな手段はない。
夕食を終え、談話室でハリーやロン、同室の四人も含めて宿題に勤しんだ後、シオンたちは寮室へ戻っていた。
「何をしていますの?」
ヒマワリが声を掛けると、マリアたち三人もシオンの手元を覗いた。
四人の視線が、『六壬式盤(りくじんちょくばん)』に固定される。
「不思議な形ですね」
「字が書いてあるみたいだけど……読めないわ」
「書いてあるのは漢字ですもの。英語圏の方に馴染みがないのは当然ですわ」
『六壬式盤』は占いの道具だ。
平安時代に活躍した陰陽師も使っていた、占いの道具である。
そう簡単に説明すると、四人は興味深そうにシオンの話を聞いていた。